前項では、明るくモダンな家づくりに欠かせない「ガラス」。しかし、ひとたび破損して飛散すると家族を傷つける凶器になったり、被災後の行動や活動の妨げになってしまう「ガラス」。
これに対して『ガラス飛散防止フィルム』を上手に貼るにはどうすればよいかを紹介しました。

今回は『食料の買い足し備蓄(ローリングストック)』です。

調理をせずに食べられる「非常食」、お湯を注いだり、少し加熱して食べる「災害食」、いつもと同じ食事が作れる「常用食」など、災害時のいろいろな場面で活用できる食材・食品を切らすことなく、備蓄しておく『ローリング・ストック』のやり方を紹介します。

(1)「食料」の分類
(2)アレルギー対応食について
(3)買い足し備蓄(ローリングストック)
(4)食料備蓄がなぜ「減災」なのか

(1)「食料」の分類

本項の序文にも記載してあるように「食料」を調理をせずに食べられる「非常食」、お湯を注いだり、少し加熱して食べる「防災食」、いつもと同じ食事が作れる「常用食」と分類して、取り組み説明していきます。

「非常食」

大震災発災後に「水道」「電気」「都市ガス」が停止しても調理をすることなく食べられるものを「非常食」とします。

調理しなくても食べられる菓子も「非常食」と言えないことはありませんが、食事とは言えないものなので除外して考えます。
さて、貯蔵保存の王道は「缶詰」ですが、最近の食品貯蔵技術の進歩は、宇宙技術の恩恵を受けて多彩になっています。料理技術や滅菌技術もさることながらよりも「アルミパウチ容器」に代表されるパッケージの性能向上が、多彩な調理品の保存を可能にしているのです。

「保存用」として、ある程度の長期保存を想定した商品の保存可能期間は、常温で2年間または3年間ですが、「常食用」または「ちょっと保存用」としてスーパーマーケットで棚売りしている商品の保存可能期間は、常温で約1年間です。
一般的に非常食と表示されたものは、保存可能期間(賞味期限と表記されていることが多い)が5年間とかになっていて、購入にあたって決意がいるくらいに値段も張ります。しかし、後で説明する買い足し備蓄(ローリングストック)を実践するなら、値段の安い常食用で十分です。
繰り返しになりますが、「非常食」とは、保存可能期間ではなくて、調理することなく食べられるものと理解してください。
もちろん、調理することなく食べられるといっても、生ものや密封されていない加工食品のように傷みが早いもので「消費期限」表示がされているものはダメですが、「賞味期限」が1か月以上のものは、十分に「非常食」となります。
いくつかの商品を示します。

ここで「豆乳」について補足しておきましょう。
飲料としての「水」は別として、栄養補給用としては、牛乳や豆乳が良いですね。
さて、皆さんがお店で見る牛乳は冷蔵されているのに対して、豆乳は常温棚にあります。そして牛乳の賞味期限は約10日、豆乳は4~5ヶ月と大きく違っています。
牛乳も豆乳も本来(空気に触れている状態)の賞味期限はとても短いのです。さらに牛乳より豆乳の方が短いそうです。
それにもかかわらず、保管環境の違いや賞味期限の違いがあるのは、なぜなのでしょうか。
それは、牛乳のパッケージは樹脂コートされただけの紙で出来ていますが、豆乳はパッケージを「ポリエチレンでコーティングされたアルミ箔」で内張りして、外気の遮断を厳密に行っているからなのです。豆乳そのものの賞味期限が短いがゆえに、パッケージに助けられて牛乳より保存期限が長くなっているのです。もちろん、牛乳にも「ロングライフ牛乳」というものがあります。これは豆乳と同じ「ポリエチレンでコーティングされたアルミ箔」で内張りされたパッケージとなっていて、豆乳同様の賞味期限になっています。
一般の牛乳に比べて豆乳の値段が高いのは、パッケージ材料の違いもあるのでしょう。

このように未開封では賞味期限に優位な豆乳ですが、一度開封すると冷蔵したとしても2~3日で飲み切る必要があります。しかし、停電状態の発災直後では、冷蔵は困難ですね。
そこで、災害時の非常食として備蓄するのであれば、200ミリリットルのパックをお勧めします。1リットルパックより割高ですが、1本ずつ飲み切り(使い切り)ができますから、衛生上は断然優位ということになります。

災害食

お湯を注いだり、少し加熱して食べることができるものを「災害食」とします。

その定番商品が「アルファ米」です。
お米のデンプンは「β(ベータ)デンプン」と「α(アルファ)デンプン」の状態を移り変わります。生のうるち米は、ブドウ糖分子が房状につながったアミロペクチンが結合したデンプン(βデンプン)となっています。この分子結合は極めて強いため、常温では水が入り込むことができず、そのまま食べても消化することが難しいのです。
ご飯を炊くと熱でブドウ糖分子の結合が緩み、そこに水分が入ってお米がふっくらと柔らかくなります。このときのデンプンの状態をαデンプンと言います。
しかし、炊飯したご飯を放置するとデンプンは生のお米の構造(βデンプン)に戻ろうとします。
そこで、炊飯直後に熱風で急速に乾燥させると、デンプンはブドウ糖分子の結合が緩んだ状態(アルファ化の状態)を保つので、その後注いだお湯や水が容易にお米に吸収されて、しっとりとした舌触りのご飯に戻るのです。
「アルファ米」商品は最初、白米だけでしたが、最近はドライカレーや山菜ご飯など、バリエーションに富んだ商品が出回っています。パックに詰められたお米はやはり白米ですが、味付けされた具材や、調味パウダーが同梱されていて、お米の戻し湯(水)で具材等の調味料が溶けてご飯に浸み込むのです。
また、パックがそのまま食器となるので、洗い物のを減らす効果もあり、災害時には重宝します。

お餅は、もち米(βデンプン)が蒸されて、杵臼で打ちつぶされることで糊化(αデンプン)した、いわゆる”お餅”となり、その後冷めることで固形化(βデンプン)したものです。
だから、お湯や水を注いだだけでは柔らかくはなりませんが、煮たり焼いたりすると、あらためてαデンプンに移り変わり、柔らかくなります。さらに打ちつぶされるときに交じり込んだ空気の泡が膨らんで、柔らかさが増すのです(余談です)。
商品化された切り餅は、清潔な状態で製造され、個別包装されているので、賞味期限が長く、保存しやすくなっています。

そして最近さらに便利になったものに、フリーズドライ商品があります。アルファ米ほどには乾燥していないので、賞味期限は若干短いですが、家庭で作れば手間のかかる料理が、お湯をかけるだけで手軽に得られるという魅力があります。日常的に利用できることから、賞味期限の短さ(それでも常温1年)は問題にはなりません。

他にもお湯を注ぐとポタージュスープになるカップスープの素なども災害食となります。
皆さんのご家庭・家族の好みのものを探してみてはいかがでしょうか。

常用食

いつもと同じ食事が作れる食材を「常用食」とします。
これまでの「非常食」「災害食」の中にも、日常的に食べているものがあるかもしれませんが、ここでは水飲料、ガス、電気が不自由な中で、より日常的な食事を調理して食することができる素材と考えてください。

ポイントは、栄養素を閉じ込めた食材で、少量の水や燃料で口当たりと味わいが戻る乾物・缶詰(パウチ品含む)と調味料です。
細かい説明は不要と思います。ぜひご家族の好みに合うものをご用意ください。

(2)アレルギー対応食について

(1)「食料」の分類 で紹介したことは『食べるまでの手間の要否』に着眼したものでした。
そして事例紹介した食材や調理済み食品は、どこにでも売っているもの、多くの人が何気なく食べているものでした。しかし、これらの食品では不都合を被る人たちがおられます。
それは、食物依存性アレルギー症の人たちです。
アレルギー症をお持ちの方やご家族の方は、すでに日常的に対処する食材を手に入れて生活されていることと思います。
当事者にとってのアレルギー特定原材料はそれぞれなので、何を用意すべきかということを、ここで説明することはできませんが、それらを『食べるまでの手間の要否』に着眼して分類しておかれることを勧めます。

(3)買い足し備蓄(ローリングストック)

それでは、分類してきた食材をどのように備蓄・補充していくのかをを考えてみましょう。

難しく考えることはありません。
使った分だけ、補充すればよいのです。
なーんだ、そんなことなら説明を聞くまでもなく、普段からやっていることだとお思いになることでしょう。そうなのです。当たり前にやっていることなのです。
しかし、ここであえて説明するのには、三つのポイントを記憶して実践していただきたいからです。

<ポイント1>
封を開けて使い始めた物は備蓄庫から日常の食品棚に移して、買ってきた物を必ず備蓄庫に補充するということです。
『また後日に』と思っていると、買いそびれてしまいます。

<ポイント2>
長期保存出来る物については、計画的に消費することです。
持っているだけで安心してしまって、しまい込んだままにしていると『いつの間にか賞味期限を過ぎてしまっていた』ということになります。
少しぐらいの賞味期限切れは自己責任で消費すればよいですが、その段階でやる気が失せてしまいますね。

<ポイント3>
味に慣れておくためです。
ポイント2の補足説明ですが、保存食の味は、家庭料理の味とは異なっているからです。
子どもやお年寄りは、舌に馴染んだ味を嫌われるようです。
そうだからと言って、それが日常の夕ご飯になると悲しいですが、ときどき家族でハイキングやピクニックに出かけるときの昼食に持っていくには良いですね。お母さんのお弁当作りの手間を省くこともできます。

考え方は分かっても、実際にどうすれば良いか悩まれる方には、ご家族に相応しい対処法をアドバイスさせていただきますので、遠慮なくご相談ください。

(4)食料備蓄がなぜ「減災」なのか

それは、非常時に人が殺到するお店に飛び込まなくても良いようにするためです。

少し落ち着いてからお買い物に行けばよいのです。
そして、迷うことなく買出し出来るようにするためです。

そのためには、備蓄食材のリストを作っておくと良いでしょう。非常時には多くの人たちが、営業しているお店に殺到します。あれやこれやと迷っている暇はありません。必要なものだけを素早く買って帰りましょう。

これは、小さいお子さんや要介護のご老人を抱える家族には、家族の見守りから離れる時間を最小化する大切なポイントです。

食料の買い足し備蓄(ローリングストック)を紹介いたしましたが、皆さま方のご家族構成や食生活習慣は千差万別です。
お困りのことがありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。一緒に考えて、食料の買い足し備蓄のお手伝いをさせていただきます。

次項は『電気の備蓄と補充(ローリングストック)』です。
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