前項の『宅地の地盤を知る』に続いて、家族にとって安心のシェルターであってほしい住宅を、耐震の観点から理解するために構造の知識を紹介します。

地震災害の後には、必ず住宅の被害がテレビや新聞に報じられます。
典型的な被災状況は、一階が崩れ落ちて二階部分が一階のようになっていたり、二階すら原形をとどめず、柱や壁材、家財が瓦礫となって積みあがったりしている姿です。
しかし、あまり報道はされませんが、同じ被災地でも外観的には無事そうな住宅もあります。
この違いが何によるものかを『住宅の構造』から探っていきましょう。

今回は、『木造軸組工法』の住宅に絞って話を進めますが、初めに建築物全般の構造と工法の概要について見ておきましょう。

Ⅰ.建築物の構造と工法の概要

建築基準法によれば、住宅を含めて建築物は構造体として「屋根」があり、屋根を支える「柱」か「壁」があるものをいいます。

そして、それら構造体(屋根、柱や梁、壁など)の
(1) 材料
(2) 構造方法
(3) 施工方法
の組み合わせによって、特徴が現れます。

(1) 材料
  ① 木構造
    ・重量が軽く、加工も行いやすいが、腐りやすいため、防腐処理が必要
    ・シロアリの被害もあるため、事前の防蟻処理と定期的な点検が必要
  ② 鉄骨構造(S造 Steel Construction)
    ・強度が大きく、比較的小断面のもので構造が構成できる
    ・火に弱い(550℃で軟化)ため、耐火被覆が必要
    ・錆びやすいため、露出使用する場合は、防錆塗装が必要
    ・一般住宅用には、肉厚6㎜以下の軽量型鋼がよく用いられる
  ③ 鉄筋コンクリート構造(RC造 Reinforced Concrete Construction)
    ・引張強度が高い鉄筋は、反面、圧縮強度が低い
    ・圧縮強度が高いコンクリートは、反面、引張強度が低い
    ・両者の長所を生かし、短所を補いあう
    ・錆びやすい鉄筋を弱アルカリであるコンクリートで覆うことで防錆される
  ④ 鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造 Steel Reinforced Construction)
    ・鉄骨の周りに鉄筋を巻き、その外側に型枠を組んでコンクリートを
     流し入れて固めて鉄筋コンクリート造を強化したもの
    ・鉄骨が入った柱、梁が、床、壁と一体の構造になったもの
  ⑤ 補強コンクリート・ブロック構造
    ・ブロックの空孔内に針金を通し、セメントを充填
    ・ブロックとブロックの接合面はセメントで貼り合わせる
  ⑥ その他(レンガ造、石造など)
    ・レンガのような単位材を接着しながら積み重ねていく
    ・重力方向の荷重は受けることができるが、水平方向の荷重には弱い

(2) 構造方法
                                      
  ① 架構式/軸組工法
    ・柱や梁などを細長い構造部材で組み合わせて骨組みにするもの
  (下図:『インテリアコーディネーター入門 田口 明 著 泰流社 より引用)

  ② 一体式/枠組壁工法
    ・壁を間柱によって壁板状につくり、建て起こして組み立てるもので、
     木材で造られる場合、2インチ×4インチを主体とした断面の構造材を
     使用することから、ツーバイフォー工法とも言われる
    ・基礎、柱、梁などを一体の構造体として鉄筋を組んだあと、型枠で囲み、
     コンクリートを流し込んで成形する場合は、鉄筋コンクリート造となる
    ・鉄骨鉄筋コンクリート造も同様
  (下図:『インテリアコーディネーター入門 田口 明 著 泰流社 より引用)

(3) 施工方法
   ① 現場施工
    ・施工のほとんどを現場で行う
    ・部材を組み合わせる「継手(つぎて)」をあらかじめ工場で加工して
     おくものも含める
   ② プレハブ工法
    ・プレハブはあらかじめ組み立てる:Prefabricationの略
    ・現場施工をできるだけ少なくするために、
     工場で裁断された柱や梁、補強材を組んだフレームを現場に運び、
     これに工場で加工されたパネルを取り付ける
    ・配線・配管まで組み込んだものも多くなっている

それでは、(材料①木構造)×(構造方法①架構式/軸組工法)×(施工方法①現場施工) の組み合わせの「木造軸組工法住宅」について、その耐震性を左右するポイントを考えてみましょう。ポイントは三つ(基礎、壁、屋根)あります。

Ⅱ.「木造軸組工法住宅」の耐震性を左右するポイント

(1) 基礎

基礎は、建物の自重をはじめ、家財などの積載物や積雪、風圧からの荷重を地盤に伝え、建物を地盤に定着させる役割があります。逆に、地震の揺れを建物に伝えてしまいますが、建物の部材が勝手な挙動をしてバランス崩壊してしまわないように保持する役割もあります。

歴史的建造物を除いて、住宅用途の建物の基礎は、コンクリートを使用したものが主流です。建物の土台の輪郭に沿って施工する「布基礎」と地面全体までを覆う「ベタ基礎」とがあります。

ただし、布基礎は地上に出ている部分を見ただけではコンクリートの中に鉄筋が入っているか、入っていないかの区別がつきません。1981年(昭和56年)以前の家の基礎に多いのは、鉄筋の入っていない「無筋コンクリート基礎」です。コンクリートは引っ張り力に弱いという性質から、地震のような引っ張りと圧縮が交互に作用する荷重には耐えられない可能性があります。

とは言っても、新たに鉄筋コンクリートの布基礎に取り換えることは難しいでしょう。
しかし、既存の無筋の基礎の外側に、鉄筋コンクリートの基礎を抱き合わせるように追加する「抱き合わせ基礎」という工法がありますので、補強方法の候補にされてはいかがでしょうか。

いずれの基礎にしても、基礎が崩れると、建物全体のバランスが崩れて、倒壊につながりますので、基礎の強度を確保しておくことは大切なことです。
これは、地震発災後だけではなく、経年劣化でひび割れを起こしていることもありますので、定期的な観察とメンテナンスが欠かせません。

(2) 壁

日本の高温多湿な風土に見合った開放的な構造と間取りは、良い建物の形として長年引き継がれてきました。現在、古民家ブームでもあり、若い世代の家族の憧れの住まいにもなっています。

当然、幾度となく地震に見舞われてきた日本の大工さんたちは、風雪だけでなく、地震にも耐える家づくりをしてきたのだと思います。寺院や名家、豪農、豪商などのお屋敷は、一本一本が太い柱と貫き(ぬき)と呼ばれる水平材を柱と柱の間に渡して、それらを強固につないでいます。大工さんたちは継手に工夫を凝らしてきたのでしょう。

一般庶民の住居については、博物施設に再現された江戸時代の長屋から垣間見るならば、太くはない柱と貫き、竹を網みこんだ土壁を巡らす様式と思われます。
長屋でなく、一軒家になったときにもこの様式が長らく一般的だったのでしょう。

しかし、お屋敷にしても庶民の住居にしても、木組み構造は地震がもたらす水平方向の力への抵抗力が弱いのは同じです。

このことに目を向けさせたのは、1923年(大正12年)の関東大震災でした。多くの建物が倒壊したことから、建築法規に地震への見直しがされて、1924年(大正13年)の大改正で『筋かい規定』が織り込まれました。
柱と水平材が細く、また接合強度が弱い場合は、ねじれ変形も起きやすくなるため、それを阻止するために『筋かい』という部材を使って『耐力壁』を設けるというものです。

つまり、柱と水平材が継手で結合された、いわゆるピン結合の四角形をがっちりとした三角形の合成体にするのが、『筋かい』であり『板』なのです。

その後、1978年(昭和53年)に発生した宮城県沖地震を教訓として耐震設計法が見直され、1981年(昭和56年)に必要壁量が強化された『新耐震設計基準』が導入されました。
この『新基準』を境にして、以前の建物に対する耐震診断や耐震補強の推進が図られています。

しかし、冒頭で示した倒壊家屋の多くは、法律改定前の建物で、間口が狭くて建物の角隅に耐力壁がなかったり、あっても筋かいの部材が細かったり、シロアリにやられていたりしていて、強度不足になっていたのです。また、柱と土台の締結が釘程度で、差し込み臍(ほぞ)が抜けてしまったのです。

建築基準法では床面積に対して必要な耐力壁の長さが規定されています。
そして、がっちりとさせるためには部材の両端がしっかりと隅部に固定されていなければなりません。そのために、金物を装着することが建築基準法施行令に規定されています。

建築基準法施行令
(筋かい)
第四十五条  引張り力を負担する筋かいは、厚さ一・五センチメートル以上で幅九センチメートル以上の木材又は径九ミリメートル以上の鉄筋を使用したものとしなければならない。
2  圧縮力を負担する筋かいは、厚さ三センチメートル以上で幅九センチメートル以上の木材を使用したものとしなければならない。
3  筋かいは、その端部を、柱とはりその他の横架材との仕口に接近して、ボルト、かすがい、くぎその他の金物で緊結しなければならない。
4  筋かいには、欠込みをしてはならない。ただし、筋かいをたすき掛けにするためにやむを得ない場合において、必要な補強を行なつたときは、この限りでない。

筋かいだけでなく、強固な建物を造るためのいろいろな規定がされています。
しかし、法律は法律であって、実際に法律に従ってバランスよく設計され、適切に施工され、その後適切に状態維持されてこそ、建物の耐震性が保たれることを忘れてはいけません。

(3) 屋根
屋根は、降雪や降雨から躯体を守る、いわば『家の傘』であり、建物の景観を生み出す『帽子』でもあります。
また、建物の最上部にあることから、地震で揺らされると、逆に柱や基礎に増幅された反力を与える『振り子の重り』となります。

住まい手の趣味趣向で様々な材料と形状が選択されますが、面積が大きいこともあって、かなりの重量物となります。屋根面積30坪(100㎡)での重量試算によると、瓦:5.6トン(自家用車5~6台分)、スレート:2トン、鋼板:0.6トンと言われています。木造建築物の耐震化では屋根の軽量化が効果的でありそうです。

また、屋根の軽量化工事は、ほかの部材の強化を特に必要としないことから、工事期間も短く、安価に行えるというメリットがあります。

一番軽い鋼板も、昔のトタン屋根調ではなく、スレート調や瓦調などのデザインもあって選択肢が広がっていますが、防音・断熱性が乏しいというデメリットもありますので、耐震補強工事やリフォームをお願いする業者の方と総合的に検討されることをお勧めします。

また、非常用電源として『太陽光発電モジュール』を屋根に取り付けることも、災害時の自立生活に有効ですが、建物の耐震力が低い場合は耐震補強が必要になってきますので、これも業者の方とよく相談してください。
特に、寄棟屋根や切妻屋根の場合は、南面にモジュールを乗せることから、屋根の荷重が片寄るために、建物を捩じる力を生じてしまうからです。ちなみに、モジュール面積30坪(100㎡)での重量試算で0.8~1トン程度です。

Ⅲ.住宅の耐震力向上へチェック&アクション

耐震性を左右する建物の基本的な構造と見方を紹介しました。
この記事を読んで既存の建物に不安を感じられたときは、市役所(豊田市は都市整備部 建築相談課)に『耐震診断』を申し込みましょう。

豊田市 木造住宅の地震防災対策と補助事業

http://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/bousaibouhan/bousaishien/1013899/1002571.html

そして、耐震診断の結果をもって、具体的な施工方法を専門の工事業者とよく相談していただきたいと思います。効果的な耐震補強を行うことで、木造住宅耐震改修費補助を受けることができます。

次項は『家具転倒防止』です。
日常生活で使っている家具に家族が襲われないためにはどうすればよいかを紹介します。
本項の『住宅』の中に家族の命と生活を守る生活空間を造りましょう。