地震災害によって自分の家族に何が降りかかってくるのか、何が起きるのかを想像できるレベルで、その後の対策レベルが違ってきます。
この項では、想像力(イマジネーション力)を高める必要性とその高め方を紹介します。

初めに、辞書で「イマジネーション」を引いてみると、大辞林 第三版の解説では、

イマジネーション【imagination】
想像。想像力。空想

さらに「想像」を引いてみると、

そうぞう 【想像】
頭の中に思い描くこと。既知の事柄をもとにして推し量ったり,現実にはありえないことを頭の中だけで思ったりすること

とあります。
ここでは、『既知の事柄をもとにして推し量ること』が適切な意味づけだと思います。
そこで、『既知の事柄』を『これまでの地震災害の教訓』と置き換えて考えてみましょう。
私が気に留めていることに限定しています。ご了承ください。

【これまでの地震災害の教訓】近・現代の主な地震から
◆濃尾地震 1891年(明治24年)
  ①濃尾平野は養老・桑名断層に向かって深くなる沖積平野。低地では液状化
◆明治三陸沖地震 1896年(明治29年)
  ②陸上では弱震でも大きな津波を起こしたプレート境界の「ゆっくりずれ」
◆関東大震災 1923年(大正12年)
  ③火災旋風に対して明暗を分けた樹木に囲まれた公園と広大な空き地
◆昭和三陸沖地震 1933年(昭和8年)
  ④明治三陸沖地震後に高台移転したが、年月の経過とともに元の場所に戻って津波の犠牲に
◆東南海地震 1944年(昭和19年)
  ⑤河川周辺の軟弱地、港湾の埋め立て地で多くの家屋倒壊
◆三河地震 1945年(昭和20年)
  ⑥生活地域を走る活断層が動いて被害集中
◆南海地震 1946年(昭和21年)
  ⑦言い伝えには無い津波の挙動。潮が引くときも、引かないこともある
◆福井地震 1948年(昭和23年)
  ⑧梅雨時期の平野部では液状化現象が起きやすい
◆新潟地震 1964年(昭和39年)
  ⑨今は川から離れた場所でも過去の河川改修で埋め立てされた軟弱地盤で液状化
◆宮城県沖地震 1978年(昭和53年)
  ⑩死者は28名と少なかったが、内18名がブロック塀や門柱の下敷きによる
◆北海道南西沖地震 1993年(平成5年)
  ⑪地震発生5分後に襲った津波
◆阪神淡路大震災 1995年(平成7年)
  ⑫老朽アパートで亡くなった学生たち
◆十勝沖地震 2003年(平成15年)
  ⑬港湾地域に被害が集中、石油タンクのスロッシング現象で火災発生
◆新潟県中越地震 2004年(平成16年)
  ⑭自動車内に寝泊りした避難者に関連死「エコノミークラス症候群」発生
◆東日本大震災 2011年(平成23年)
  ⑮東北から関東まで広がった被害。震源近くでは津波、遠隔地では長周期地震動

このように、幾多の地震は私たちに教訓を残してくれています。しかし、それを受け止め、自分の生活環境整備に活かさなければ、ただの記憶で終わってしまいます。

それでは、内閣府が発信しているホームページ『歴史災害に関する教訓のページ』から『阪神・淡路大震災教訓情報資料集』の一部を参照して、教訓⑫老朽アパートで亡くなった学生たち を考えてみましょう。

http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/index.html#01

1.第1期・初動対応(初動72時間を中心として)
1-01.被害発生
【02】人的被害
01.震災による死者は6,434人に及び、高齢者、低所得者、外国人などが多く犠牲になったとされている。
01) 震災による死者数は、災害発生後の疾病による死者(後述の「震災関連死」)を含め、6,434人にのぼった。
02) 年齢別では高齢者の死亡数が多く、死亡率としても80歳以上の死亡率が高くなっているが、一方で20歳代の死亡率の高さも指摘された。
03) 犠牲者のほとんどは自宅における死亡であり、戦前の木造住宅が比較的多く残存していた地域での死者が多かったとされる。
04) 外国人の死亡率は、日本人の死亡例と比較して高かった。
05) こうした死亡率の違いについては、死因等に関するより詳細な分析を通じて、今後の防災対策へ反映していくことの必要性が指摘されている。
02.死者のほとんどは圧迫死による即死状態だったが、一部には火災等、他の原因による死者も報告されている。

Honkawa Data Tribue 『社会実情データ図録』No.4363
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4363f.html
によると、『年齢別では高齢者の死亡数が多く、死亡率としても80歳以上の死亡率が高くなっているが、一方で20歳代の死亡率の高さ』が確認できます。

同じくHonkawa Data Tribue 『社会実情データ図録』No.4361
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4361.html
によると、『戦前の木造住宅が比較的多く残存していた地域での死者が多かった』ことが確認できます。

また、同じくHonkawa Data Tribue 『社会実情データ図録』No.4363
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4363f.html
から、『死者のほとんどは圧迫死による即死状態』が確認できます。

ここで目を引くのは、なぜ20歳代の死亡者が多かったのかということです。
これら三つの現象の相互関係を分析したものは見つけ出せていませんが、防災講演会で聴いたことを記載させていただくとすれば、『大学生は学資が限られた中で、一人で下宿するのだからと家賃の安い老朽アパートに住んでいて被害にあった』と言われています。
旧態のアパートは、長屋の形をしていて、間口面に筋交いがありません。今の建築基準では建つことはないでしょうが、新基準は過去に遡りませんから、脆弱な建物が残っていたのです。
それは現在でも同じです。2016年4月に起きた熊本地震でも、阿蘇にあったアパートで大学生が多く亡くなっています。1階部分が押しつぶされた形でした。
だから、この教訓を活かすならば、賃貸しようとする物件の築年と構造部材の入り方をよく観察して、契約の判断をする必要があります。

しかし、『いろいろと備えてみたり、お金をかけてみたりしても、地震がやってこなければ、ムダ金ではないのかな』と思われる方もあるかもしれません。過度な投資は不要ですが、想像力を働かせて必要不可欠なところには躊躇することなく投資すべきなのです。
⑫老朽アパートで亡くなった学生たち のように、将来ある若者を失ってしまわないためにも、耐震性の高いアパートを選んであげたいですね。
それで地震が来なかったとしても、『地震が来なくて良かったね。君の子どもたちが下宿するときにも配慮してやってね』と減災のあり方を親から子どもへ実践を通して継承できるのです。

このように、基本的な物の見方を知っているか、いないかで、今後どのような被害が起こり得るかが想像出来たり、出来なかったりします。
『減災力はイマジネーション力』と言いましたが、『減災』に向けたイマジネーションを起こすには『既知の事柄』のエッセンスを読み取る必要があります。そして、その積み重ねがイマジネーション力強化につながるのです。

最後に、内閣府が制作・公開している『南海トラフ巨大地震、首都直下地震の被害と対策に係る映像資料』を紹介しましょう。
過去の災害を踏まえて、今後起きうる巨大地震をシミュレーションして映像化しています。
これを参考にして、身の回りに起きうる被害を想像する力を養いましょう。

http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/nankai_syuto.html

私たちは『地震災害は必ずやって来る』しかし『備えた分だけ被害は軽減できる』と前向きに取り組んでいきたいですね。

次項は『“不安”から“心配”へ』です。
漠然とした“不安”を具体的な“心配”に置き換えてみると、今やるべきことが見えてきます。その置換えに有効なツールを紹介します。